2020/09/13 23:59







朝9時頃、家のチャイムが鳴りました。


寝ていたので出るのをやめようかと思いましたが


何回かチャイムが鳴らされたので仕方なく出ることにしました。



ドアスコープを覗くと、スーツを着た男性が立っていました。


ドアを開けると、そこには他にも数人いました。


たしか、おばちゃんもいました。



玄関先に入ってくるなり、1枚の紙を取り出し、何かを説明し始めました。


寝ぼけた頭では理解できずにいましたが、


アレがテレビで見るような





「逮捕令状」だったのでしょう。





それから、数人の刑事が家の中を捜索し始めました。



「白いズボンはこれだけ?」



「それ、水着ですけど?」







押収されました…




とりあえず、換気扇の下でタバコに火をつけました。


その頃には頭もはっきりしてきました。


電話が鳴り、携帯の画面を見ると息子からでした。





” パパぁ!すいぞくかんなんじにいくのー!!! ”





この日は、子どもたちを水族館に連れて行く約束をしていました。





” お昼頃また電話するよ ”





“ わかったぁ!ばいばーい!!! ”










これが、息子との最後の会話になるなんて思ってもみませんでした。





「じゃ、警察署の方へ行こうか」





寝起きだったので、出かける準備をしました。


ちょっと警察署で怒られて終わりかと思っていたので、


頭もワックスまでつけてセットしました。


もう二度と家に戻れないなんて思ってもみませんでしたから。



カバンの中にはたばこと財布くらい。


もう二度と家に戻れないのなら


着替えやその他もろもろ準備できたのに。


準備しろなんてひとことも言われませんでした。



刑事たちと一緒に警察署に向かい、


階段を上がると目に入ってきたのが







【留置施設】のプレート




重たそうな鉄の扉の前で、両手を出すように言われました。


人生初の手錠


腰に縄を巻かれ


扉の向こうへ……